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2016.01.14

Monthly Report お知らせ

Monthly Report! topics & recommend! vol.23【展覧会情報/福岡アジア美術館】

2016年、初アート鑑賞!
見る“まなざし”を変えてみると
“お隣のアート”は10倍面白い!


現在、福岡アジア美術館で絶賛開催中の《日韓近代美術家のまなざしー『朝鮮』で描く》展。絵画を中心に陶磁器、彫刻など、日韓両国を代表する近代作家の作品が一堂に会します。「お隣の国のアートだから私たちの感覚に近い…?」。いえいえ!私たちと感覚が近いからこそ、見る視点でその面白さも倍増するのです。

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そもそも、今回の展覧会ってどんなもの?

今回の《日韓近代美術家のまなざしー『朝鮮』で描く》展は『20世紀前半の日本と韓国の美術、そして美術家の交流』に焦点をあてたもの。日韓の芸術家たちは、日本による朝鮮半島の統治、そして戦争、終戦という「近代」の複雑な時代背景の中、自分たちの抱える苦難や葛藤を乗り越えようとする『まなざし』で制作活動を行い、豊かな作品を生み出しました。互いの国に縁のあった藤島武二、山田新一、荒井達男、山口長男、浅川伯教・巧など日本近代美術を代表する作家たち…。一方、高義東(コ・フィドン)や、李仁星(イ・インソン)李仲燮(イ・ジュンソプ)、金煥基(キム・ファンギ)、李快大(イ・クェデ)などの韓国近代美術の作家の代表作に加え、戦前の在「朝鮮」の日本人作家の作品なども合わせて200点もの作品を見ることができます。

作品それぞれの見ごたえはもちろんですが、時代や文化の背景を知ることで、さらに奥深く作品を味わえるのが企画展の醍醐味! そこで今回は、福岡アジア美術館学芸員・ラワンチャイクン寿子さんに、当展覧会のチェックポイントについて聞いてみました。

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Q.まず、今回の展覧会全体の見どころをおしえてください!

A.「今回がおそらく、ラストチャンス!」
まず、日本と韓国の近代美術がこんなにたくさん、一堂に展示される機会というのは今までありませんでした。簡単に実施できる展覧会ではないので、多分、『次』はないだろうと思っています。しかも当展は、日本国内6会場を回って福岡が最終会場。福岡は韓国に近いということもあり、韓国から見にいらっしゃる方もいるほど。日本や韓国でもふだん、各地の美術館に散らばって所蔵されている作品ばかりですし、また常設展示していない作品も多数。その辺りを見ていただけたらと思います。

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各作品には、これらの「色」で作家の出身国等を表している。あえてその色を見ずに
「この絵は日本の作家か?韓国の作家か…?」といった自分なりの楽しみ方にトライしてみて

 

Q.とくに注目したい“面白い”作品はありますか?

A.「あのノーベル賞受賞の大村智先生のコレクションが!?」
この《洗濯》という絵は、入江一子さんという100歳近いまだご存命の日本人作家の作品です。彼女は大邱(テグ)生まれ大邱育ちで美術を勉強するために東京の女子美術学校に来られて、再び大邱で暮らし、終戦で日本に戻ってこられた作家なんです。ですから、彼女にとって朝鮮半島というのは、生活そのものの場所なんですね。だから、風光明媚な観光地ではなく、昔日本でもそうであったように、川の水でザブザブと服を洗っているような日常を描いているわけです。韓国の風景ですから、描かれる女たちは片膝立てていたり、壺を頭に載せていたりしますが、それは旅行で朝鮮半島を訪れた日本人作家が目に留めるような異国情緒豊かな風景ではなく、彼女ならではの、生活者の目で見た作品だと思います。
実は、この絵は最近ノーベル生理学・医学賞に輝いた大村智先生のコレクションなんです! 大村先生は美術にも造詣が深く、女子美術大学の理事もされていたので、女性作家の作品をたくさんコレクションされています。所蔵されている『韮崎大村美術館』は、大村先生が私財を投じて地元に還元するために造られたものです。

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入江一子《洗濯》1940年 韮崎大村美術館所蔵


Q.ほかにどんな“まなざし”がユニークな発見を可能にしますか?

A.「“福岡女子”も共感?!」
日本から韓国に行った作家というのは、女性を描く時もキーセン(妓生)という芸妓さんを描いたり、崩れた王宮で休んでいる男性を描いたりと、伝統的で、しかも少し“停滞した雰囲気”を描くという定番があるんです。でも当時、京城(ソウル)はいち早く電車が通り、電気も灯り、日本よりも文明開化が早い都市だったんですね。なので、韓国の作家は自分たちの絵を“モダン”に描いています。例えばポスターにも使われているイ・ユテの《和音》という作品は一見伝統的な様子ですが、後ろにグランドピアノがあって西洋的な教養を身につけたモダンガールを描いています。これと対になる《探求》という作品では、科学者のキャリアウーマンといった働く女性を描いています。
もちろんひとつの見方で作家全員がそうというわけではないですが、風景にしても風俗にしても、意識(まなざし)の向け方を会得すると、興味深く作品を見ることができるのではないでしょうか。

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イ・ユテ《和音》1944年 韓国国立現代美術館所蔵

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イ・ユテ《探求》1944年 韓国国立現代美術館所

 

Q.では、逆に日本と韓国に共通する『まなざし』はありますか?

A.「韓国の“富士山”?!」
北朝鮮から韓国にかけて連なる金剛山という山がありますが、その山は日本人も韓国人も共通して描いている題材です。金剛山は仏教の聖地で、韓国では昔から仏教絵画の中で描かれてきた場所です。しかし、近代になって日本の統治の中で電車が敷かれ、スキー場や温泉ができると、畏敬の対象から『鑑賞する山』『登山して征服する山』に変わっていき、素晴らしい風景画が観賞用に作られるようになります。韓国人にも日本人にも金剛山専門の作家というのがいるぐらいなんですよ。このようにまなざしがすれ違う部分もあれば、一致するものもあります。

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山内多聞《金剛赤壁江》1953年 都城市立美術館所蔵


Q.展示を超えて楽しめる、そんなプラスαも楽しいとお聞きしていますが…。

A.「ロマンティックストーリーをぜひ!」
1月24日(日)のNHK『日曜美術館』でも取り上げられる予定ですが、韓国の国民的画家でイ・ジュンソプという作家がいます。彼は戦前に絵の勉強で東京に留学し、戦争が激化する中、山本方子さんという日本人のお嬢様と大恋愛の末、結婚します。戦後、韓国で過ごし、お子様も2人産まれますが、朝鮮戦争が起きて生活苦から山本方子さんとお子様は日本の実家に戻られることに。ついには国交断絶の中、会えないままイ・ジュンソプが亡くなってしまいます。存命中、彼は離れ離れになった家族への想いを描いていました。この《夫婦》という作品は、なかなか会えなかった二羽の雄鶏と雌鶏が出会って接吻しているところです。“首を長くしてお待ちしています”という気持ちでしょうか、それはそれは首が長く描かれていて…。山本方子さんのドキュメンタリー映画も1月23日(土)に上映しますので、合わせてご覧ください。

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イ・ジュンソプ《夫婦》1953年 韓国国立現代美術館所蔵

■テレビ放映 日曜美術館(NHK Eテレ 毎週日曜9:00〜10:00、再放送 翌週20:00〜21:00)
http://www.nhk.or.jp/nichibi/index.html

■映画上映 『ふたつの祖国、ひとつの愛~イ・ジュンソプの妻~(2015年) 』 画家イ・ジュンソプと結婚した日本人女性・山本方子氏の愛を描くドキュメンタリー。
○日程=1月23日(土)14:00~
○場所=あじびホール(8階)※上映時間は変更になる場合があります。
○料金=無料(本展観覧券の提示をお願いすることがあります)
○申込み=不要(当日先着順)
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Q.見るだけでなく韓国を“体験”できるイベントもあるとか?

A.「着て!食べて!韓国の文化を満喫してください!」
アジ美では会期中、日本と韓国の文化の違いを楽しむためのイベントも開催中です!どちらのイベントも申込は終了していますが、空きがあれば『参加も可能』です。詳細はお問合せください。またボランティアによる解説付きの観覧は当日参加OKです。

韓国海苔巻き「キムパッ」を巻こう!
韓国の食文化の解説と、キムパッのデモンストレーション。
○講師=兪成淑[ユウ ソンスク]氏(焼肉・冷麺「大東園」オンマの手料理担当)
○日程=①1/19(火)、②1/26(火) 各日11:00~12:30
○場所=カフェ(7階)
○料金=1500円
○定員=各日20名 要申込

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人気店調理人の味をぜひ!


チマ・チョゴリで巡る展覧会
韓国のチマ・チョゴリの試着と作法の体験。そのまま会場にて出品作品に描かれた当時の韓国の生活の話をうかがいます。
○講師=李善姫[イ・ソニ]氏(冷泉荘ソニ韓国語教室主宰)
○日程=①1/15(金)、②1/24(日) 各日10:30~12:30、14:00~16:00
 ※②1/24(日)14:00〜16:00の回は定員に達しました。
○場所=あじびホール(8階)および本展会場(7階)
○料金=2000円、および本展観覧券が必要です。
○定員=各回15名 要申込

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華やかなチマ・チョゴリを着てみるチャンス!

※両イベント問合せ
○電話=092-263-1100


■解説ボランティアが案内する韓国アート
本展から常設展示室で開催中の「韓国アート1965-2015」までを細かい解説付きで見られるチャンスです!
○日程=1月の木・金曜 14:00~15:00
○料金=本展観覧券の提示が必要
○申込み=不要(当日先着順)
○集合場所=本展受付前(7階)

 


企画展《日韓近代美術家のまなざしー『朝鮮』で描く》展
○日程=開催中〜2/2(火)
○場所=企画ギャラリー(7階)
○料金=一般1,000(800)円、高大生800(600)円、中学生以下無料 ※( )内は20人以上の団体、65歳以上の料金
http://faam.city.fukuoka.lg.jp/home

 

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