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2016.09.21

Monthly Report お知らせ

Monthly Report! topics & recommend! vol.30【「おたふく物語」主演・藤山直美インタビュー/博多座】

笑いあり!ほろり涙あり!
『おたふく物語』主演・藤山直美インタビュー


 

人々の心の機微を鮮やかに描き出す珠玉の舞台
藤山直美が2年ぶりに博多座に登場!

10月公演は、これまで何度も博多座を沸かせてきた喜劇役者・藤山直美が登場!大衆文学の大家・山本周五郎の傑作小説『おたふく物語』を原作に、心温まる愛と人情の物語をお届けします。藤山直美が演じるのは、家族の問題を抱えながらも、江戸の下町で健気に暮らす女性“おしず”。家族の絆や人と人とのつながりを描き、これまで数々のヒット作を生み出してきた石井ふく子が演出を手掛けます。博多座公演を前に、『おたふく物語』にかける想いを伺いました。

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2014年の『笑う門には福来たる~女興行師 吉本せい~』以来、2年ぶりに博多座へ帰ってきた藤山直美さん

 

お客さんに楽しんでもらえるように
自分にできることを精いっぱいやるだけ

Q.まずは今のお気持ちをお聞かせください。

2年ぶりに博多座へ来させていただいて喜んでおります。博多座に来させてもらう時、いつも私は「博多の人は何を観たら喜んでくれはるのだろう」と思うんですけど、やっぱり分かりません。いまだに謎です。「ミュージカルの方がええんかな」と思うこともありますが、今さら私は開脚もできませんし……(笑)。博多では何が喜ばれるのか、関西や東京の役者にとって謎なんです。それでもできることしか私たちはできませんので、その中でお客さんが楽しんでくれればいいなと思っております。特に今年は4月14日に熊本地震が起こったので、九州の人に元気になって帰ってもらいたいですね。

Q.『おたふく物語』は東京の下町が舞台ですけど、関西と比べて東京の下町はどういう印象ですか?

関西も東京も下町はどこも同じで、ものが安いですね。博多も櫛田神社近くの川端通商店街は下町の風情がありますよね。ただ、東京は言葉(標準語)がねぇ……。私は昔「標準語を勉強しなさい」と言われたことがあったんですけど、20年近く前に出させてもらった中村吉衛門さんの『鬼平犯科帳』の舞台上で江戸弁を聞いて、「私は生まれ変わらないと無理や」と思いました。私に標準語を諦めさせたのは中村吉衛門さんです(笑)。

Q.今回の『おたふく物語』での言葉遣いはどうなりますか?

私は関西弁以外喋れません。私だけ関西弁で話すことになると思います。過去にドラマで九州の言葉を話す役のお話があったんですけど、何回かお断りしたことがあります。勉強してもなかなかネイティブには喋れないんですよ。山本先生は江戸のお話が多いので、関西人の私が作品に出させていただくとは夢にも思っていませんでした。

Q.6月に上海国際映画祭で受賞されましたが、演技に対してプレッシャーは感じられますか?

映画は監督が撮るもので、私はたまたま女優として出演していただけ。受賞したのは監督なんですよ。映画は指先一本まで監督の演出。自分が受賞したという意識はまったくありません。ただ、ライブで演じなければならない舞台は、演技を誤魔化しようがありません。ちょっとした所作でも自分が出てしまうので、役者の演技に責任があると思います。

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映画『団地』にて、日本人女優初となる金爵賞最優秀女優賞を受賞した

 

チャーミングで人間味あふれる
“おしず”の魅力に惹き込まれる

Q.脚本を読んでの感想を教えてください。

おっちょこちょいで、おたふく(不美人)な“おしず”さんが男の人に惚れる物語ですが、ストーカーのように恐ろしい情念ではなく、一途に男性を想うチャーミングな情念が伝われば、おもしろくなるのではないかと思います。

Q.“おしず”という女性はどんな印象ですか?

どこの家庭でも見せたくない部分ってあると思うんです。見栄を張るわけではないけれど、他人には言えない部分や触れられたくない部分とか。私たちにも兄弟・姉妹がいますよね。さらに甥っ子や姪っ子もいて、幸せに暮らしていますよね。でも、どんな家庭であっても、家の中で悩みや問題がないなんてことはないでしょう。“おしず”さんは家族問題や密かな恋心を抱きながら、現実を直視して生きている人物だと思います。闇の部分を隠しきれない儚さや、いつまでも嘘をつき通せるわけではないことを理解した大人の女性だと思います。

Q.”おしず“が想いを寄せる”貞二郎“を演じるのは錦織一清さん。”貞二郎“が彫金した作品を“おしず”が大切そうに持っているポスターが印象的ですね。

そういう気持ちは、誰にあっても当たり前だと思います。先ほども話しましたが、チャーミングな好意は女性の本能だと思います。ご主人がいても、アイドルの追っかけをしたりするでしょう。そういう女の部分をずっと持っている方が、女性にとって健康的なことではないでしょうか。

Q.ちなみに、藤山さんの憧れの人はいますか?

それは福岡ソフトバンクホークスの王貞治会長です。王会長が監督だった頃はお見かけする機会もありましたが、今は大きな行事でないと見られないのが残念ですけど。私は子供の頃にもらったサインを今も大事に持っています。

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「チャーミングに生きる“おしず”を演じたい」と熱意を語る

Q.舞台で芝居することへの想いは?

父・藤山寛美がお芝居をやっている頃は、「芝居が一番の娯楽だ」という時代でした。今の時代は趣味が多種多様で、お芝居にまったく興味がない人もたくさんいます。テレビは指ひとつでチャンネルを変えられますが、舞台はそうはいきません。幕が上がったら、最後まで責任を持って演じるしかありません。劇場へ足を運んでいただくには、大変な労力を要します。お客さんの気持ちを動かせるよう、私たち役者が心してお芝居に取り組んでいかなければならないと思います。

 

おもしろさと残酷さは紙一重
表面では見えない心の内側が見どころ

Q.『おたふく物語』の見どころはどこでしょうか?

私は影の部分がおもしろいと思います。家族の悩みを抱えていたり、一途に男性を想っていたりする“おしず”さんの心のバックステージに注目してほしいです。その方がお客さんも“おしず”さんの人間味に共感してもらえるんじゃないかと思います。

Q.明るいキャラクターと怖いキャラクターの演じ分けはどうなさっていますか?

不謹慎な話ですが、お葬式は亡くなった方の家族にとっては大変悲しい行事ですけど、はたから見たらめちゃくちゃおもしろいんですよ。お坊さんが段取りよりも早く来てしまったとか、玄関に黒い草履ばかり並んでいるから「これは私のや」と揉めているとか。喜劇ってすごく残酷性があるんですよ。伊丹十三監督の『お葬式』っていう映画は、まさにこのことを描いています。怖い部分と喜劇のおもしろい部分は、私にとって紙一重なんです。人が人を笑う時、その人がおもしろくて笑うこともあれば、その人が憐れで見下して笑うこともあるんです。「愉快」だけでなく、「憐れみ」や「見下し」もそうであるように、笑いの種類はたくさんあります。この紙一重な心の機微が伝わるように演じています。

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9月上演の明治座でも、藤山さんのコミカルでいて泣ける演技に賞賛の声が上がっているそう

Q.プライベートで福岡に来ることは? 好きな食べ物は?

福岡には友達がいるので、よく訪れます。大名とか天神西通りとか。今は博多駅前が元気ですね。食べ物はゴマサバ、ゴマカンパチ、おきゅうとが好きです。

 

お祭り気分で街をにぎやかに
父から受け継ぐ気楽に観られる芝居

Q.福岡をはじめ、九州の人へメッセージをお願いします。

私は気楽に観られるお芝居が好き。家族や親戚、町内に1人はいるような身近な人物を描くのが好きです。父の時代、お芝居は「藤山寛美がやってるやん。ほな観にいこか」というような気楽さでした。そういうのだけは崩したくないと思っております。私からすると博多座という舞台は高級な気がしますけれど、普段着で観に来てもらえるような気楽な舞台にしたいです。『おたふく物語』で博多の街が賑わえばいいなと思います。お祭りみたいなものですから、お芝居って。

 


 

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『おたふく物語』

原作:山本周五郎
脚本:黒土三男
演出:石井ふく子

出演:藤山直美、錦織一清、田中美佐子 音無美紀子、金子昇、丹羽貞仁、林与一、他
○日程=10/5(水)~27(木)
○料金=A席/14,500円、特B席/11,000円、B席/8,000円、C席/4,500円
○問い合わせ=博多座電話予約センター
☎092−263−5555
http://www.hakataza.co.jp/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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