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2017.06.09

Monthly Report お知らせ

Monthly Report! topics & recommend! vol.39【六月博多座大歌舞伎〜中村芝翫、橋之助、福之助、記者会見レポート〜/博多座】

『六月博多座大歌舞伎』〜中村橋之助改め八代目中村芝翫襲名披露、橋之助、福之助、歌之助 親子四人同時襲名〜
中村芝翫、橋之助、福之助、記者会見レポート


 

成駒屋の大名跡・芝翫が五年ぶりに復活!
三人息子も打ち揃う博多座初の四人同時襲名披露公演

毎年恒例の『六月博多座大歌舞伎』。今年は中村橋之助の前名で、お茶の間に親しまれてきた八代目中村芝翫の襲名披露です。今回は合わせて三人の息子、橋之助、福之助、歌之助も同時襲名。三人の息子たちはこの襲名披露公演が博多座初お目見得となります。大名跡の襲名、また博多座でも初めての四人同時襲名への意気込みを、芝翫、橋之助、福之助の三名が熱く語りました。

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中村橋之助改め八代目中村芝翫(真ん中)、中村国生改め四代目中村橋之助(右)、中村宗生改め三代目中村福之助(左)。

 

襲名に向けて…
博多への思い

芝翫:実は、先代の芝翫(七代目)である父が亡くなります前に、兄弟で呼ばれ、兄の福助に歌右衛門を、お前に芝翫を継いでもらいたいと遺言のように言われたことがありました。その時点では、兄が歌右衛門を襲名するのが先でございますので、私が襲名するのは、まだしばらく先かなぁという気持ちでおりました。しかし、残念ながら兄は病気療養中で未だに襲名はかなっていません。兄が療養中の今、僕が東の成駒屋をなんとかしなくてはいけない…、そしてこの襲名がいい刺激となり、兄の病気回復に少しでも繋がってほしいというのが、今の僕の一番の思いでございます。

 

橋之助:昨年、父の名跡を四代目として襲名させていただきました。国生時代は博多座には来たことがなかったので、今回の襲名披露が初お目見えとなります。序幕で「車引」の梅王丸を演じさせていただきますが、僕が中学二年生の時に、“なんとかっこいいんだろう”と鳥肌が立って、歌舞伎俳優になりたいと強く思ったきっかけの役ですので、今から六月の博多座が楽しみでなりません。夜の部の四人連獅子も兄弟心を揃えてやっていきたいと思っております。

 

福之助:東京、大阪で無事襲名披露を終え、六月からここ博多座で襲名の後半戦が始まります。気持ちを切り替えて臨みたいと思います。僕も兄と同様、博多座に出るのが初めてなのですが、楽しみな気持ちでいっぱいです。弟(歌之助)が高校生になったばかりで、今日は学校があり来られなくてすみません(笑)。

 

芝翫:こうして博多に参りますと、博多座での様々な出来事が走馬灯のように思い出されます。若手で「小笠原騒動」をやらせていただいたこと、勘三郎の兄と共に汗を流したこと、三津五郎のお兄様とたくさんお話をしたこと、いろんなことがございました。
僕の大好きな、大好きな博多座でこれだけ大きな襲名興行をやらせていただけるのはありがたいことです。親としても、長男次男三男と打ち揃ってやれることは幸せな思いでおります。夜の部の連獅子は勘三郎の兄が息子二人と三人連獅子をやった時に「お前のところは息子三人いるから四人連獅子だなぁ、うちは負けた(笑)」と大きな声で笑った笑顔が今でも忘れられず、是非とも襲名には四人連獅子をやりたいなぁと思っておりましたので、博多座でも叶いまして本当に嬉しく思っております。


夜の部の『祝勢揃壽連獅子(せいぞろいことぶきれんじし)』。能の「石橋」をもとにした長唄の舞踊の大曲。今回は襲名を祝し、新たな間狂言を書き加えての上演だ。親子四人が勢ぞろい!

 

四人同時襲名から見える
親子、兄弟の姿

芝翫:はじめは僕一人が芝翫を襲名するという話だったんです。そこに国生が橋之助になりたいと言ってきました。成駒屋には名跡が少なくて、歌右衛門、芝翫、福助、児太郞、とそれに並ぶ名前がないんですが、父が「大きくなった時に名前をつけてやって、それで背中を押してやるのも親の仕事だ」と言ってくれたことを思い出し、それから福之助、歌之助の名前もすぐに浮かんできました。橋之助の名前は長く一緒に歩んできた名前でしたから、私自身、非常に愛着もあります。長男が口上で橋之助を名乗った時には、一瞬嫉妬しました。絶対渡したくないと思った。だから、うちの父親も上でそう思っているんじゃないかな(笑)。
僕は基本的に息子にはあまり歌舞伎を教えないです。どこの家庭でもそうでしょうが、他人から言われると素直に聞けることでも、父親から言われると「このやろう!」って思うでしょ(笑)。それは芸でも同じ。国生の橋之助に関しては三津五郎の兄さんのところに行って習っていましたし、福之助も菊之助さんのところに習いに行っています。そういう多くの鳥居をくぐるっていうことが大事なこと。四人連獅子も、最初は毛もバラバラで全然揃ってなかったんです。でも三人がよく意見を出し合って、毛の振り方も揃えるようになりました。兄弟が仲がいいので、いろんなことを話し合いながらやっていってほしいです。

 

橋之助:僕は高校生の時に歌舞伎に出たいと言って21歳の今まで歌舞伎をやってきているわけですが、福之助の場合は学校生活優先ということで、あまり舞台には出演していなかったんです。一番下の歌之助はまだ中学生でしたし。なので、この襲名が始まる前までは三人一緒とは言いながら僕が手綱を引くというか、引っ張っていくという気持ちは僕の中にも兄弟の中にもありました。襲名披露公演が始まってからは福之助と歌之助も色々と言い合えるように、一方通行ではなくディスカッションできるようになってきています。それは襲名で一緒にいて、経験したことのない大きな役を勉強させていただいたのが大きいと思います。

 

福之助:毎日家でご飯を食べながらビデオを見て、こう合わせよう…とか、稽古をお互いチェックしています。話し合っていると、よく兄(橋之助)が「お前ら何か言えよ」と言っていて、襲名前はそう言われてもわからないから言えない自分がいたんですが、だんだん僕の意見というのが出せるようになってきました。兄弟揃って襲名させていただいているのはとても心強いです。

 

橋之助:芝居のことを話し合うようになって、芝居に関して喧嘩することが増えましたね。これはいい意味でというか、相手が嫌いで喧嘩をするのではなく、意見の出し合いというか。父のように三人がそれぞれ色々な役をできるようになって、三人でお互い助け合えたら、成駒屋も強くなれるし、歌舞伎界の戦力にもなれるなぁと思っています。

芝翫_橋之助_福之助_歌之助 口上写真
『口上』右から、中村橋之助改め八代目中村芝翫、中村国生改め四代目中村橋之助、中村宗生改め三代目中村福之助、そして中村宜生改め四代目中村歌之助。裃姿の俳優が列座して襲名を祝します。

 

 

若手の情熱、
そして芝翫という重責

橋之助:「車引」の梅王丸は一言で表せないくらい憧れていた役で、三津五郎のおじ様が梅王丸を演じていらっしゃる時に、その演じる姿や準備の様子をずっと見ていて、袖で録音した音声を使って家で演じたりしていた時もありました。そういう役がとうとう実現するというのは、歌舞伎座を裸で逆立ちして3周できるぐらい嬉しいこと。本当に冗談じゃなく、楽しみで楽しみで仕方ないです。しかも、演じられるだけで嬉しいのに、雲の上の存在である吉右衛門のおじ様に稽古していただける。衣裳を着ての写真撮影に立ち会っていただいた時は、人生で一番緊張して、人生で一番幸せな時間で、友だちや家族みんなに自慢して回りました。一回きりでなく、次は三兄弟で演じるところを観たいねと思っていただけるように勤めたいと思います。(取材後の中村獅童休演により「車引」は松王丸を芝翫が演じることとなり、親子四人での演目となりました。)

 

芝翫:芝翫という名前を襲名するというのは、単に個人に名前がついたというより、芝翫という会社の社長になったようなもの。宝石箱の中に埃もつけずしまっておくということではなく、この時代の事業成績も上げなければいけないし、新しいものも開拓していかないといけない。そして最終的に八代目芝翫として三人兄弟の誰かに九代目を渡さないといけない。自分だけのことを考えているわけにはいかないんです。これは歌舞伎界にとっても同じこと。今、勘三郎、三津五郎の二人がいなくなったことが一番辛いんです。常にその二人は僕の前を走っていた。距離が近くなったかと思うとすぐに離されてと、ずっと前にいてくれた二人だったのに、ある日ふっといなくなってしまった。お兄さんたちの代わりはできないし、穴は埋められないかもしれない。でもやはり、こうなった今、自分のことだけでなく歌舞伎界全体のことを考えていかないといけない立場であると思っております。

河内山
昼の部「河内山(こうちやま)」。芝翫演じる悪徳お数寄屋坊主・河内山宗俊が金目当てに、幽閉された娘を救い出すという痛快な演目。芝翫丈も「才覚優れた人物で、ただの悪党ではない」と大好きな役どころだとか。

 

 

『六月博多座大歌舞伎』
中村橋之助 改め 八代目 中村芝翫 襲名披露
中村国生 改め 四代目 中村橋之助
中村宗生 改め 三代目 中村福之助 襲名披露
中村宜生 改め 四代目 中村歌之助

出演:中村芝翫、中村橋之助、中村福之助、中村歌之助、ほか

○日程=6/2(金)~26(月)
○料金=A席/18,000円、特B席/15,000円、B席/12,000円、C席/5,000円
○問い合わせ=博多座電話予約センター ☎092-263-5555(10:00〜18:00)
http://www.hakataza.co.jp/

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